本研究は、学校教育でのコンピュータ・ネットワークの利用を学校文化の再構成へ向けて発展させるための基礎研究として、(1)ネットワークによる学習共同体づくりを支援するシステムの開発、および(2)フレネ教育実践の発展としてのコンピュータ利用の可能性の探求、を行うことを目的とするものであった。 上記(1)のために、若手科学者によって構成される「湧源サイエンス・クラブ」の人たちが、電子メールを通して、港区神応小学校の苅宿学級の生徒たちの「科学に関する疑問や関心」に答え、相互交流をはかるという実験的な試みが、大きな成果を見た。(2)のためには、以前からフレネ教育実践を行っている保谷第二小学校の田中学級にマルチメディア対応パソコン1台を入れ、フレネ教育実践における子どもの自由作文やアルバムなどの作品づくり等にコンピュータを活用した実践が行われ、本格的な作品が多く作られた。また昨年度の秋から、神応小学校の生徒たちとの学級間通信がが盛んに行われるようになった。 これらの試みを通して、電子メディアがもたらしうる新しい学校教育の可能性として、若手科学者とのコミュニケーションによる子どもの探求活動の促進効果が実証されてきたが、直接対面の重要性がうきぼりになっったが、実際に子どもと科学者とが対話するということは、きわめて困難がともない、双方での学習が必要であることも明らかとなった。また、マルチメディア・パソコンは、フレネ教育にも有効に使えるが、作品づくりのためよりも、むしろ彼らの作品目録のデータベースとしての活用に威力を発揮し、誰がいつどんな作品をつくったかを子どもたちは興味を持って検索していた。苅宿学級との電子メールによる作品交換も成功した。
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