研究補助採択決定後、実験教材を制作したが、アナログ映像にデジタルの字幕キャプションをオーバーレイするのはNECのマルチメディアラボを頻繁に使用してもかなり時間がかかった。また、画質の低下がひどくやり直しに次ぐ、やり直しでスケジュール上かなりの無理をした。夏以降断続的に予備実験を重ね、現在までに述べ10数人の大学生、英語力上位者、英語ネイティブスピーカーにて調査した。関連学会でも2度にわたって報告したが、1)英語力低位者には、習熟度に応じた適切な事前練習がなされないとキャプションは妨げにしかならず、映像をあきらめるか、キャプションをあきらめるかという選択的な情報処理をする傾向があることが明らかになった。また、アイマークレコーダーによる停留点移動、停留点時系列グラフに分析により、2)キャプションからの情報収集をより容易、適切に行えるような練習が学習者の習熟度とうまくかみ合えば、キャプション、映像という2つのシンボルシステムからの情報収集を、効果的に音声モードと補完、重複させ理解を深めていくのではないかという推察ができる程度まで明らかになった。さらに、3)映像を楽しみながら、音声英語をほとんど理解するようなレベルの英語力上位者の視線運動は、ネイティブスピーカーの視線運動と近似しており、音声を確認したり、部分的に保完したりするためにキャプションを適宜注視することがわかった。 来年度にかけて、事前の練習問題と習熟度の関係をさらに明らかにすること、映像なり、キャプションを注視することが言語、内容理解とどのように結び付いていくのかという点を少しずつ明らかにしていくつもりである。
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