理工系の実験・実技で用いられる基礎的な専門日本語の用語や表現を簡便にかつ効果的に説明するための教材として、ビデオのような映像メディアは優れているが適切なビデオ教材は殆ど無い。本研究においては、先ず本学の工学基礎実験のテキストや市販の教科書より実験・実技で用いられる科学技術日本語表現を抽出し、用例の表現を機能別に分類した上でビデオ化に相応しいと思われる表現を整理しシナリオを作成した。本学の情報処理サービスセンターAV室の全面的な協力のもと、撮影、録音および編集を行ない、「科学技術日本語ビデオ教材」のプロトタイプを試作した。これは実験・実技の実際の場面を「ドラマ方式」でビデオにしたのではなく、科学技術用語を主体とした辞書的な構成を心掛けた。例えば、物理学編では位置として「正面」「上面」「右下」など、装置の周りでは「真正面」「真横」「手前」など、動画としての特徴を最大限活かせる用語を、シナリオはその言葉だけに焦点を当てて余計な言葉を入れず可能な限り短くし、表示方式は同一画面に対し、音声のみ、音声とテロップ、テロップのみの3カットを設定し学習しやすいようにした。この制作方針のもと物理学編と化学編を作成しこのビデオ教材を本学の夏期日本語プログラムで使用し、留学生の意見を集約した。また平成6年度秋季日本語教育学会(仙台)にて発表したところ非常に好評を博した。これらの意見を参考にして、更に専門日本語と一般日本語との関連性にも配慮し、より辞書的な色彩の強い教材にして学習しやすいように心掛け、初級の日本語を習得した理工系の学生を対象としたビデオ教材を制作中である。
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