本研究は、「源氏物語」の作者、成立過程をめぐる諸問題を、従来の成立過程論論争ではなく、コンピュータを用いてより詳細でかつ正確な計量分析を行い、解決を試みようとするものである。 研究初年度の今年は (1)すでに本研究の代表によって作成されていた、中央公論社の「源氏物語大成」(池田亀鑑編著)を底本とし、単語分割し品詞情報を付加した「源氏物語」54巻のデータベース(約40万語)について、単語認定、品詞認定などの最終的なチェックを行い、自立語(約22万語)に関して語彙用例総索引(約5500頁)を作成し出版した。 (2)作者に関する問題を解決するため、「源氏物語」を模倣して書かれたとされる「手枕」、「雲隠六帖」及び「山路の露」を入力し、単語分割し、品詞情報を付加する作業を行った。 (3)成立過程に関する問題を解決するため、「紫式部日記」及び「紫式部集」を入力し、(2)と同様なデータベースを構築する作業を行った。 (4)「源氏物語」54巻のデータベースを用い、各巻の初出単語の分布、延べ語数に対する異なり語数の割合など、次年度以降の研究に必要となる基礎的な統計量を算出した。
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