大気汚染物質の指標としてNO_2を捉え、短期暴露(24時間)・長期暴露(1カ月間)の両側面からの測定を行い、この濃度測定と樹木の活力度との相関を、1994年4月から1995年3月にかけて調査した。調査地は広島市西部に位置する極楽寺山(693m)において、NO_2濃度を標高50mごとに都市側・内陸側とに分け、毎月1回測定した。また、この測定地沿いに、ヤマザクラ・カスミザクラの着葉率、アカマツの枯死率を年2回、ヒサカキの落葉率を2カ月に1回の頻度で観測した。 NO_2濃度測定の結果、都市側においては低標高では濃度が高く(20-40ppb)、標高の上昇に伴って濃度は低下した(<10ppb)。しかし、内陸側ではほぼ一定して、低濃度であった(4-10ppb)。短期暴露での測定では、気象条件により非常に高濃度になる日があることが示された。また長期暴露では、測定地点間の恒常的な差異が認められた。 また、アカマツの枯死率、及びヒサカキの落葉率とNO_2の濃度とには極めて高い相関が見られた。ヤマザクラ・カスミザクラの着葉率とNO_2濃度の相関は決して高くはなかったがその着葉率にはNO_2濃度の高い都市側と濃度の低い内陸側とでは歴然たる差が見られた。具体的には、都市側斜面では、ヒサカキの落葉率は60%を超え、サクラ類の24%が枯死し、平均着葉率も約40%であるのに対して、内陸側斜面ではヒサカキの落葉率は10%以下で、サクラ類の枯死率は0.2%、着葉率が95.8%であった。 以上のように、大気汚染によると思われるアカマツの被害が、高層木のサクラ類に限らず、低層木のヒサカキ等の広葉樹にも被害を広げていると推察された。
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