平成4年度から6年度(1994-1996)にわたり、我々は天の川領域での銀河の探査を2つの方法で行い、この領域での銀河分布の大規模構造を明らかにした。 (1) IRAS銀河の探査 赤外線天文衛星(IRAS)によって検出された遠赤外線の放射強度が一定値以上の銀河をIRAS銀河と呼んでいる。遠赤外線では星間吸引が低いため、天の川領域でもIRAS銀河の検出は、天の川領域外と同じように可能となる。我々はIRAS点源のうちで遠赤外線でのスペクトル分布が銀河の特徴をもつものすべてを選びだし、この点源の位置に銀河が存在するかどうかをシュミットプレート上で調べた。これらの天体のカタログをつくり、出きる限り多くの天体について視線速度を測定した。この結果、天の川領域での銀河分布の大規模構造を特徴づける(1)天の川をよぎる5つのフィラメント構造、(2)2000km/sの近傍にあるとも座銀河団の存在、(3)局所空洞の構造、(4)超銀河座標X方向に沿っての100Mpcにおよぶ大規模構造、などを明らかにした。 (2)銀河中心方向での銀河探査 (1)のIRAS銀河の探査によって、銀河中心方向に大きな空洞が存在していることがわかった。しかし、この領域では星間吸引がもっとの大きいことが知られており、この空洞の存在を認識するためには、さらなる銀河探査が必要である。われわれは、本科研費によって購入した大型基盤顕微鏡を用いて、シュミットプレート上での銀河探査を行った。この結果、約1050平方度に対して12000以上の銀河候補を検出した。これらの天体のカタログをつくり、視線速度測定を開始した。検出した銀河候補の面密度から考えて、近傍銀河はほぼ検出できたと判断している。視線速度測定がすすめば、この領域での銀河分布の実体を明らかにすることができる。
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