本年度は、データ取得のためのワークステーションの導入を行った。これにより、波高分析器など各種の計測器を制御する方法を確立した。簡単のために、ディジタルオッシロスコープを使用して比例計数管からの信号波形を取得し、その波形解析を行った。これにより、信号の立ち上がりを詳しく解析すれば、一次電子雲の形状の違いを判別でき、入射X線の偏光情報を取り出せることが判った。従来までは、単純な立ち上がり時間解析をアナログ回路で行い、X線と荷電粒子とを識別する程度のものが多かったが、この詳細な波形解析により同じエネルギーのX線であっても種々の情報を引き出せることが判った。従って、信号波形の詳細な解析手段は新たな結果を生むものと期待できる。次に、半導体検出器からの信号を波高分析器で取得し、その形状の詳細な解析を行い、検出器内の構造を詳細に調べた。以上のことは、いずれも信号解析の準備段階で判明したことである。エネルギー分解能を改善できるかどうかについては、平成6年度の段階ではデータ取得速度がオッシロスコープで制限されるので、まだ処理できる信号波形の数を増やせないため明確な結論には至っていない。これについては、平成7年度に高速化を計る予定であり、その準備を進めている。理論的な考察から、どのようなディジタルフィルターを使うのが良いかを研究し、S/N比を最良にするフィルターをデータから順次生成する方法を作った。本来の比例計数管のエネルギー分解能は電子増幅過程の揺らぎで決定されるので、これを出来るだけ取り除けるよう印加電圧を低くして動作させれば良い。平成7年度は多量のデータを取得し研究を予定通り進める。
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