ガス比例計数管や半導体検出器のX線検出原理は同じである。その違いは、前者がガスによる一次電子数の増幅をするのに対して、後者は増幅作用がない。まず、半導体検出器について、その信号波形を詳細に調べることにより、発生した一次電子の動きを研究した。その結果、空乏層の浅い領域で発生した電子群は、場合によっては、電極に吸着され、波高の下がることが判った。この振る舞いは、ガス検出器で見られる窓の吸着と同じ現象であることを示した。こうして、詳細に波高分布を調べた。ガス検出器では、K吸収端やL吸収端の前後で生じる一次電子数に差があり、線形性の損なわれることが知られているが、半導体検出器では、K吸収端においても、線形性の損なわれないことが判った。これは、吸収物質が単体原子であるか、結晶をなしているかによる。こうして、一次電子の吸収物質内での振る舞いが理解できた。次に、ガス増幅によりその振る舞いがどうなるかについて調べた。ガス比例計数管からの信号波形を計算機に取り込み、それを詳細に調べた結果、信号波形の立ち上がり方が、X線の偏光方向に依存していることを見つけた。これは、ガス比例計数管が、X線偏光測定に利用できることを示唆する。次に、多数の信号波形を重ね合せて、X線に対するテンプレートを作り、それを元にして、波形全体を使って信号波高を求めた。これにより、ガス比例計数管のエネルギー分解能として、6keVで17.0%を得たが、これは、単純に信号波高のピークから求めた結果(17.4%)とは有意に変わらなかった。結局、ガス増幅が十分になされているため、電気的な雑音レベルを下げる必要はないと判った。
|