研究概要 |
本研究の目的は、近・中間赤外線天文学用の冷却・ファブリ・ペロ干渉器により、空間的に拡がった天体源の二次元スペクトル線像を大フォーマットアレイ検出器上に結像し、高角度分解能で、位置、相対強度精度の高い観測データを得るための技術開発であった。以下に4項目について成果を述べる。 1.極低温で、 使用波長の1/(100)程度の超高精度でエタロンを駆動するアクチュエータの2方式について研究をした。第1のXY-,Z-アクチュエータの直交アクチュエータ方式は製作を終了し、アリゾナ大学中間赤外線グループのカメラへの組み込み、試験、改良などが進行中であり、その後、天文観測を開始する。第2の方式はソレノイド型の3点独立アクチュエータ方式であり、これは詳細設計が終了した。 2.ファブリ・ペロ-干渉器の走査波長校正方式の研究を行った。半導体レーザを用いた赤外フリンジ検出による校正方式と、近接キャパシタンス・マイクロメータを用いたエタロン間隔の測定方式を実験室で評価試験をし、極低温干渉器中に使用する方式を決定した。 3.大フォーマット・アレイ検出器と大口径望遠鏡を組み合わせて使用するための、極低温冷却光学系の設計を終了した。これは、共軸非球面三鏡面方式の反射光学系であり、レンズ材質の制約のある透過型とは異なり、全波長域で、非常に優れた結像性能を示している。 4.2波長高角分解能撮像方式を開発、観測試験に成功した。ファブリ・ベロ-干渉器の観測対象は、星間雲、発光ネビュラ、HII領域などの特定波長スペクトル線で観測される拡がった微光天体であり、従来これらの観測は、極端に困難であり、観測可能な対象は極めて限られていた。この新方式は、近傍の赤外線点状源を使用して、大気の揺らぎ、望遠強の駆動誤差など補正しつつ、長時間の積分を可能にするもので、従来、ファブリ・ペロ-分光器を用いた、2次元赤外線微光天体の撮像に威力を発揮する。
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