本研究は、現在、建設の進んでいる大口径望遠鏡と最新の大フォーマット赤外線アレイを用いて、中間赤外線域で高角度分解能・高分光分解能を有するファブリ・ペロ-チ干渉器による2次元天体撮像観測技術の開発をすることが目的であった。 この目的のために開発した極低温で動作する超伝導アクチュエータを用いたファブリ・ペロ-チ干渉器については、既なデザインの得失の比較から始め、設計、試作モデルの製作が行われた。この試作モデルは、アリゾナ大学中間赤外線天文学グループとの協力のもとに、試験観測を行っている。 極低温ファブリ・ペロ-チ干渉器を、観測装置に組み込む際の、極低温光学系の設計については、多数のケース・スタディと最適化が、共軸非球面三反射面方式、軸外し円錐曲面二反射面方式などについて行われた。このうち、ファブリ・ペロ-チ干渉器の挿入が容易な後者の軸外し二反射面方式については、一例を、近赤外二波長撮像試験観測装置に、実際に組み込み、スチュワード天文台60インチ赤外線望遠鏡を用いて試験観測を行い、その光学性能の実証を行い、設計性能が達成されていることが確認できた。 中間赤外線用のファブリ・ペロ-チ干渉器の観測対象は、星間塵、発光ネビュラ、HII冷域などの特定波長スペクトル線で観測される拡がった微光天文であり、従来、観測可能な対象は極めて限られていた。この研究でTWO-Wavelength Shift-And-Add法という世界的にも例の無い新しい観測技術を開発し、試験観測に応用して、ファブリ・ペロ-チ干渉器を実際の観測に応用するための2次元赤外線アレイを用いた観測法として、極めて有効なことを実証した。
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