研究計画に沿って、大型(並列)計算機を用いたモンテ・カルロ・シミュレーションでQCDにおけるクォーク閉じ込めの機構の研究を進めてきた。我々は、アーベリアン射影をすると生じる磁極子(モノポール)が凝縮をおこしてカラー荷電粒子(クォーク、グルオン)を閉じ込めるという考えで研究している。今年度の実績は以下のようである。 (1)SU(3)pure gauge theoryの1つのmonopole current に対するeffective actionを求めた。monopole loopの単位長さあたりのentropy ln7と比較することにより、monopole凝縮が示された。 (2)pure SU(2)QCDに対してmonopole actionのcouplingをこれまでに得られていたよりも、より低エネルギー領域まで正確に調べた。その結果、低エネルギー領域において得られたactionは、ほぼfixed length abelian Higgs modelに対応したmonopole current actionになることがわかった。また、このactionがVillain like modelやstring modelに変形できることを利用して、解析的な計算によりstring tensionを求めたところ、物理的なstring tensionとconsistentであることが示された。 (3)有限温度のpure SU(2)QCDにおいて、monopole actionに基づいて有限温度相転移のorder parameterを調べた。その結果、空間サイズが無限大の極限でこのoperatorがorder parameterになることを支持する結果が得られた。 (4)有限温度SU(2)QCDにおいて、Polyakov loopを用いて相転移の臨界指数を求めた。abelian成分のみで定義したPolyakov loopと、monopole(Dirac string)で書かれたPolyakov loopは、ともにSU(2)Polyakov loopから求めたものと同じ臨界指数を与えることがかかった。 (5)2つの新しいabelian dominanceおよびmonopole dominanceが示す新しいゲージを発見した。 (6)モノポール凝縮と非閉じ込め相転移の関係をはっきりさせることを試みた。 これらの結果は、Lattice'96の国際会議で鈴木、北原、江尻、中村によって発表された。
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