研究概要 |
核子スピンに関わるスピン依存構造関数g2^d (x)の測定とQCD高次ツイスト効果を調べるめ平成7年度においては以下の研究を行った。 1.スピン依存構造関数g2^d (x)をx領域にして0.003≦x≦0.7の範囲で測定した。測定条件は、(1)ビームエネルギー190GeV、強度と偏極度は4×10^7pppと-82%であった。 (2)偏曲標的には重陽子化ブタノール(60cm×2)を使い、偏極度は±50%であった。 測定した事象数は、g2^d(x)についてトリガー数21.6M eventsを収集し、現在詳細な解析を進めているところである。また、g1^d (x)については採用eventsとして残っているものは535万事象で、それまでの2年間の合計836万事象と比べると極めて効率の良い実験であった。 g2^d(x)の測定から高次ツイストに関する物理的な意味を導出することはたいへん興味深いことではあるが、CERNのニューオンビームはビーム強度が足らず、3次のツイストに関係するg2^d(x)についてはっきりしたことを言うのは難しいと思われる。しかし、その結果はg1^d (x)の系統誤差を抑える意味で重要な役割を果たすと期待されており、有用な測定であった。実験は平成7年4月22日から10月6日までほぼ6ヵ月にわたり行った。 2.偏極ポリエチレン標的の開発 従来の偏極標的はいづれも試料生成は液体窒素温度(77K)の下で行わねばならず、また試料に混入すべき常磁性物質は温度に敏感で、固体アンモニアの場合、115Kになると消滅してしまう。このような不自由さを克服するため、常温で常磁性物質を混入して試料化できるポリエチレンを標的とすべく開発テストテストを行った。しかも、この物質は薄膜状に薄く加工することも可能で、高エネルギー実験のみならず、極めて低いエネルギーの散乱実験にも使用出来る。この開発研究の結果、偏極度としてP_+=+40%,P_-=-66%を記録した。現在のところ、これは世界最高の偏極度であるが、私たちの測定は偏極成長の途中で液体ヘリウムが無くなったため、最終値ではなくさらに高偏極度が期待できる。
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