研究概要 |
Tibet羊八井(標高4,200m)において数百GeV領域でガンマ線バーストを観測することの可能性を探るために、乗鞍宇宙線観測所(標高2,870m)において、3台の直径2.2m、高さ2.2mの水槽用タンクを、一辺10mの正三角形の各頂点に配置し、それぞれのタンクの水深約1.5mに8"φ光電子増倍管(PMT)を上向きに沈め、空気シャワーによる水中チェレンコフ光を検出した。トリガー条件は、3ケのPMTに各々1個以上の光電子が相互時間差100ns以内に検出された場合とした。記録された空気シャワーの光電子数の合計数の最頻領域は20ケであった。角度分解能(50%値)は、6台のシンチレーション検出器との比較により、約15°であることがわかった。 この結果を陽子起源の空気シャワーのSimulationと比較した。光電子数分布の形は30GeVから5TeVのどのエネルギーの場合もほぼ実験結果を再現した。また、角度分解能は12〜10°程度となり、これも実験値と一致した。また実験ではエネルギー領域70GeV<E_P<800GeVの空気シャワーが全体の60%を占め、最頻領域は200GeV前後であると推定された。 次に、Pool arrayを、羊八井高原に設置した場合をSimulationによって調べた。Pool arrayは、単位面積10m×10mのpool(PMTの水深1.5m)49基を190m×190mの中に30m間隔で設置するものとした。この結果、観測できるガンマ線の中心的エネルギー領域は、スペクトル形と強度がGRB910503型、GRB930131型および宇宙線陽子型のどの場合も約300GeV〜1TeVであることがわかった。角度分解能は、ガンマ線では入射エネルギー300GeVで平均1.2°,1TeVで平均0.6°が得られた。さらに、ガンマ線源の観測可能性は、GRBについては、観測時間1秒でかつスペクトルのCut-offが10TeVの場合、GRB910503で40σ、またGRB930131で約200σという大きな有意性で観測出来ることがわかった。
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