イオン照射はダイヤモンドに合成段階でドープすることが困難な不純物を導入する手段として注目されるが、導入された不純物の存在状態や生成した格子欠陥をミクロなレベルで同定することが重要である。半導体結晶中の水素の存在状態は現在のトピックスであり、シリコンでは格子間水素は電荷によって安定なサイトが異なり、ダイヤモンドではどうなるかという興味がある。本年度は、不純物の種類(窒素、ニッケル、ホウ素)、濃度を系統的に変えたダイヤモンド結晶に、水素イオン照射(AVFサイクロトロン、加速電圧10Mev、室温、スキャン照射により、16〜20個を同時に照射)を行ない、生成する点欠陥を電子スピン共鳴(ESR)法を用いて同定、定量した。現在までに、1x10^<15>〜6x10^<16>H^+/cm^2までの照射量依存性の実験を行なった。水素イオン照射後、原子空孔、原子空孔複合体、原子空孔と不純物との複合体などのESRシグナルが観測され、照射損傷の種類が、結晶育成段階で導入した不純物の種類、濃度に依存すること、及び電子線照射(2MeV)とはかなり異なることが見いだされた。本研究によって初めて見いだされたESRセンターも含まれる。アモルファス化を示すシグナルは観測されなかった。現在までのところ、水素核の超微細相互作用を示すシグナルは観測されていない。したがって、注入された水素イオンの大部分は反磁性の状態で存在していると考えられる。引き続き、電子核二重共鳴法による弱い超微細相互作用の分離、イオン照射後の低温光照射下のESR測定や昇温処理後のESR測定、赤外吸収の測定などを試みている。
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