ダイヤモンドの電子デバイスへの応用拡大は、n型ダイヤモンド半導体の開発にかかっている。平成6年度の水素イオン照射につづき、平成7年度は、燐(n型ドーパントとして期待されている)イオン照射を行ない、イオン照射を用いたn型ダイヤモンド半導体合成法の指針を得ることをめざした。高エネルギー(9〜18MeV)の照射を行なうこと、IIa型合成結晶を用いること、高圧下で高温アニールを行なうことなど、他のグループの行なっていないことを試みた。まず、燐触媒を用いて育成した高圧法単結晶中の燐による電子スピン共鳴シグナルを探索し、ダイヤモンド結晶格子に燐が入りうること(この結晶では燐は第2近接位置に窒素を伴う)を確認した。 18MeVの照射では、4x10^<12>〜1x10^<15>/cm^2の照射量の範囲で、打ち込みイオン1個当たりのアモルファス相のタングリングボンド(D.B.)の生成量は一定であることが見いだされた。D.B.のESRシグナルは、単にアモルファス相の形成のみでなく、アモルファス相の形態の変化をモニターするのに便利であることが判明し、アニールによって結晶性の回復する照射条件探索の指針が得られた。照射線量を落とすと、照射後にもD.B.のESRシグナルのほかに、点欠陥に起因するシグナルが見い出された。また、高線量照射の場合に、照射後にはD.B.のESRシグナルのみが観測されたが、1800℃(6GPa、14hrs)のアニール後にはD.B.のESRシグナルの大部分が消失し、点欠陥に起因するシグナルが見い出された。両方の場合とも、2本の分裂を示す点で燐(核スピン1/2の同位体100%からなる)の関与する可能性の高いものも含まれ、燐の存在状態を明らかにするために単結晶回転の詳細な測定を進めている。
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