研究概要 |
本研究は、固体のオージェ・光電子同時計数法を確立し、これを利用して固体の内殻励起状態の緩和過程等の解明に寄与することを目的として始められた。本実験では、軟X線照射により固体試料から放出されるオージェ電子及び光電子のエネルギーを分析すると同時に、これらの同時計数を行う必要がある。同時計数を行うためには、2台の電子エネルギー分析装置がそれぞれ見込む微少(〜1mm^2)な試料上の位置と、光源であるX線管が照射する試料上の位置とが相互に重なり合うことが必要である。 本年度で三年計画の研究が終了するに当たり、実験遂行に当たって前年度までに生じた問題点の解決策を講じた。主に、高透磁率のμメタル板を用いた残留磁場除去の徹底、各電子エネルギー分析装置前段への電子レンズの設置、分析装置位置調整機構の新たな製作、及び同時計数測定制御用ソフトウェアの改良である。これらの対策の結果、同時計数測定装置の一応の完成をみた。装置各部の性能は本研究当初の予想を上回るものであり、完成の遅れはあったものの本格的な同時計測測定が可能となった。 現在予備的ではあるが、Ce金属におけるCe3d光電子放出過程の終状態とCe M_<4,5>N_<4,5>N_<6,7>オージェ緩和過程の始状態の間の中間状態に異常な緩和過程の存在を示唆する結果が得られている。この過程にはCe4f準位が関与するものと予想され、このことは重い電子系に関連して極めて興味深い。当研究課題にて完成したオージェ・光電子同時計数装置を用いた研究により、今後上記の異常緩和過程を含めた興味ある新しい結果が得られ、当研究課題が固体の励起状態の緩和過程の解明に果たす寄与は大きいものと信じている。
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