研究概要 |
本年度は,絶対反射率を精度よく測定するために,半導体検出器を整備し,コンプトン散乱X線,散漫散乱X線,蛍光X線を測定する方法と,従来の減衰板を用いる方法を比較する実験を進めている。絶対反射率による表面X線回折法の有効性を示すために,Si(111)‡3ׇ3-Bi構造について実験・解析をおこなった。この構造には,2つの相があることが知られている。一つは,我々が以前に初めて提唱した被覆率1に相当するmilk-stoolでモデルある。他の一つは,LEEDなどの測定により提唱されている被覆率が1/3のモデルである。ところがつい最近,我々の提唱した被覆率の高いモデルに対抗するかたちで,被覆率が2/3のハニカムモデルが提唱された。 本研究では,絶対反射率の観点から新たに測定をおこない,被覆率,原子配列も再度検討した。基板温度を制御しながらBiを蒸着すると2つの相がLEEDにより観測された。それぞれの相について,00ロッド,および,透過の配置での01ロッドにつて回折強度の変化を測定し,入射強度で規格化し反射率を求めた。00ロッドの解析からは,特に,被覆率と吸着の高さが分かり,01ロッドの解析からは,原子配列や,面内の吸着位置についての情報が得られる。その結果,2つの相の被覆率は,1,および1/3であることが明確に示され,被覆率が2/3のモデルは否定できることが分かった。さらに,原子配列についても,被覆率が1のモデルについては,以前に提唱したmilk stoolモデルで良いことが再度確認された。
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