研究概要 |
これまで結晶中の最低電子励起状態である励起子ポラリトンの緩和過程は広く調べられ,かなり理解が深まってきた。しかし,大抵の物質は電子-格子の結合がかなり強く,吸収,発光,共鳴ラマン散乱などの手段を用いても,限られたエネルギー領域以外での緩和の詳細を知ることが出来なかった。我々は電子-格子弱結合系の典型的な物質として,単斜晶2燐化亜鉛β-ZnP_2の研究を進める過程で,この物質が励起ポラリトンの内部構造と緩和の動力学を探るのに理想的な系である事を見いだした。平成6年度には,高い励起状態における緩和の詳細を調べるためにチタン・サファイアレーザーの発振域より共鳴励起の領域を拡大する目的で,色素レーザー(Spectra Physics 社 375B)を購入した。10月には,約1WのCW発振出力を得る事が出来,バンドギャップ領域の励起が容易に行えるようになった。更に,液体ヘリウム温度から室温に至る温度変化の実験を容易に行うために,液体ヘリウム連続フロー式クライオスタット(Oxford 社 CF1204DA)を購入した。こちらの方は,購入手続きが長引いたため,実際に使用できたのは,1月になってからである。 研究の方は,低エネルギー域でn=1励起子ポラリトン発光の特異な振る舞いや,高い励起子状態,すなわちn=2,3,4からの発光を見いだし,緩和に関する乗用な情報を得つつある。結果の解釈,実験の実施法についてはこれまでに3度物性研究所において検討を行った。これらの結果の一部を国際会議で報告し,また日本物理学会のジャーナルに発表した。一部は現在投稿中である。また、高エネルギー域での新しい成果などは,1995年度春の物理学会で口頭発表する。一方,β-ZnP_2の異型結晶である赤色2燐化亜鉛α-ZnP_2においては,間接励起子発光の温度変化による実験から,世界で始めて,間接励起子2音子遷移過程を観測することが出来た。これについては現在投稿準備中である。
|