研究概要 |
励起子ポラリトンの内部構造と緩和の動力学を探るため,電子-格子弱結合系の単斜晶2燐化亜鉛β-ZnP_2の励起子吸収域を,平成6年度に導入したチタン・サファイアレーザーを用いて共鳴光励起を行い,多くの重要な結果を得ている。 励起エネルギーが縦波励起子エネルギーより低いとき,n=1励起子ポラリトン発光が消失する。レーリー散乱,無輻射遷移を原因と見て解析を進めている。n=2,3,4など高い励起子状態からの発光を見いだし,緩和においては,1LO散乱の他に共鳴2音子ラマン過程が重要な役割を果たすことを確認した。3重項励起子発光の励起スペクトルにおいて,ワニエ励起子の系列をn=9まで超高分解能で検出した。一方3重項を励起して1重項発光を観測すると,新たなd型と思われる励起子系列が検出された。このことは1重項-3重項の項間交差を考えるときのモデルとして,励起子の本質に触れる重要な問題を提起している。この点を解明するため,現在励起スペクトルの磁場効果を測定しており,非常に鋭いゼーマン分裂を観測している。結果の解釈,実験の実施法について物性研究所において検討を行った。結果の一部は国際会議で報告し,また日本物理学会のジャーナルに発表した。これらの結果を基に,一名の学生が学位を取得した。最近,3重項発光のゼーマン分裂も明瞭に観測した。新しい成果は,1996年度春の物理学会で口頭発表する。またルミネッセンス国際会議,励起子国際会議でも発表予定である。β-ZnP_2の異型結晶である正方晶α-ZnP_2においては,間接励起子発光の温度変化による実験から,世界で初めて,間接励起子2音子遷移過程を観測することが出来た。これは岡山大学の紀要に発表した。現在発光寿命の測定が物性研で進行中で,3重項発光などに強励起効果が観測されている。
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