研究概要 |
励起子ポラリトンの内部構造と緩和の動力学を探るため,モデル物質として電子-格子弱結合系の単斜晶2燐化亜鉛β-ZnP_2を選び,その励起子吸収域を波長可変レーザーで共鳴的に光励起する事により,多くの重要な結果を得ている。 励起子準位n=2,3,4など高い励起状態からの緩和においては,1L0散乱の他に共鳴2音子ラマン過程が重要であることを確認した。3重項励起子発光の励起スペクトルでは,励起子の系列をn=9まで超高分解能で検出した。一方3重項から1重項発光への変換では,s-型ではなく,これまでに観測されたことのないd-型と思われる非常に鋭い励起子系列が現れる。これは1重項-3重項の項間交差のモデルとして,励起子の本質に触れる重要な問題を提起している。励起スペクトルの磁場効果を測定すると,鋭いゼーマン分裂が観測される。また3重項発光のゼーマン分裂も明瞭に観測した。結果の一部はプラハのルミネッセンス国際会議で報告した。これらを基に,一名の学生が学位を取得した。3重項励起子の発光寿命を測定すると吸収強度から予想されるものより6桁も短い寿命が観測された。解析の結果,3重項励起子が容易に励起子分子に変換される事,また3重項から1重項へのアンチストークスフォノン遷移の可能性を示す結果を得た。これらは,これまでの中,強結合系結晶の励起子においては観測できなかった緩和過程である。ドルトムント大Froehlichとの共同研究により決定した3重項励起子の分散曲線と総合して,緩和過程に関する新たな解析を進めている。β-ZnP_2の異型結晶である正方晶α-ZnP_2においては,間接励起子発光の温度変化による実験から,間接励起子2音子遷移過程を確認することが出来,励起子国際会議と日本物理学会のジャーナルに発表した。現在β-ZnP_2の発光の温度変化の測定が物性研との共同研究として進行中である。また3重項発光の寿命の測定も京都大学との共同研究が進んでいる。
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