研究概要 |
多くの酸化物微粒子において、ポジトロニウム仕事関数が負であるために,微粒子間隙の自由空間に放出されたポジトロニウムは、微粒子バルクに戻ることができず,表面の原子とのみ選択的に相互作用する。 本科研費では、この事を利用し、1.酸化物超微粒子表面の表面常磁性中心の研究と、2.時間分解運動量測定装置の作成およびそれを用いたシリカ超微粒子表面の電子状態の研究を行った。 1.表面に常磁性中心が存在すると、オルソ・ポジトロニウムがスピン転換してパラ・ポジトロニウムに変化し、2光子自己消滅する。これを利用すると、選択的に、表面常磁性中心が検出できる。まず、シリカ超微粒子を、低温で高速陽電子照射しながら、陽電子消滅2光子角相関と陽電子寿命を測定する実験を行った。この結果、生成した表面常磁性中心が、ポジトロニウムで検出可能なこと、表面常磁性中心は、室温では不安定であることがわかった。ひきつづき、低温でシリカ、アルミナ超微粒子を紫外線で照射する実験を行った。陽電子照射を行ったときと同じく、表面常磁性中心の生成が確認された。表面常磁性中心の成因は、表面のOH基やCH_3基のHがとれることに帰せられる。 2.表面に常磁性中心が存在しないとき、オルソ・ポジトロニウムの2光子消滅は表面電子とのピックオフ消滅である。時間分解運動量測定により、オルソ・ポジトロニウムしか存在しない時間領域を選び、表面電子の運動量分布を測定した。その結果、製造されたままのシリカ・エアロゲルと800℃で熱処理したものとの間には、観測された運動量分布に顕著な差があることが見いだされた。これは、熱処理によって表面のOH基やCH_3基が遊離したためと思われる。
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