幾何学的競合系の磁気秩序化過程

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06452059
• 研究機関: 福井大学
• 研究代表者: 目片 守 福井大学, 工学部, 教授 (80025345)
• 研究分担者: 高木 丈夫 福井大学, 工学部, 講師 (00206723) ; 網代 芳民 福井大学, 工学部, 助教授 (00025438)
• キーワード: 幾何学的競合 / 三次元競合系 / 基底状態 / スピン揺らぎ / スピン凍結 / 中性子スピンエコー / μSR / NMR

研究概要

幾何学的スピン競合系について本年度は以下のような結果を得た。
1.CsNiCl_3型化合物における磁気的秩序化過程
CsFeBr_3、RbFeBr_3で転移点以下のある温度領域でNMRの信号が粉末パターンとなり、120°構造の面間の位相に乱れがあることを見いだしたが、これが静的な乱れか動的な揺らぎかは、まだ分からない。イジングスピン系であるCsCoBr_3でも中間温度相で磁壁ソリトンの伝播が内部磁場に揺らぎを与えるためにNMR信号が弱くなること、低温相でもソリトンの緩慢な運動があることを明らかにした。CsNiCl_3の高磁場における磁気構造が理論の予想と一致することを確かめた。
2.FeI_2の結晶場分裂と磁気相図
FeI_2において結晶場分裂による電子転移があることをESRとμSRによって見いだした。また、強磁場磁化から三重臨界点の存在が否定されたが、一次磁気相転移とどのように関係するか興味深い。
3,CuFeO_2の不純物効果
イジングスピン系であるCuFeO_2にAlをドープするとハイゼンベルグ系となり、らせんスピン構造になるが、クロスオーバー濃度や共存領域の有無などについとはまだ実験的に結論が出ていない。
4.頂点を共有する四面体からなる三次元競合系の基底状態。
SrCr_8Ca_4O_<19>のμSRでは強いスピン揺らぎが0.1Kまで観測されているが、中性子スピンエコーを測定したところ、磁化率の測定から予測されたように3.5K以下でスピンが凍結することが明らかになった。また、0.07KまでNMRの時期緩和に異状がないY(Sc)Mn_2でも2K以下でスピンが凍結するという結果がμSRにより得れた。ランダム系におけるスピンの凍結とは異なる様相を示す三次元幾何学的競合系の基底状態は今後の問題である。

研究成果

• [文献書誌] Y.Ajiro: "Neutron Diffraction and Hig Field Magnetization Study of Magnetic Phase Transition in the Triangular Lattice Antiferromagnet ABX_3." Physica. B213-214. 209-211 (1995)
• [文献書誌] T.Kato: "Magnetic Phase Transition in a Distorted Triangular Lattice Antiferromagnet RbMnBr_3." Physica. B213-214. 182-184 (1995)
• [文献書誌] Y.Kohmoto: "Sublattice Switching in Three Dimensional Ordered Phase of the Triangular Lattice Amtiferromagnet CsCoCl_3." Phys.Pev.B64. 12526-12529 (1995)
• [文献書誌] M.Mekata: "Magnetic Ordering in CsCuCl_3." J.Magn.Magn.Mater.140-141. 1987-1988 (1995)
• [文献書誌] M.Chiba: "NMR Study of the Field-Induced Phase Transition in CsCuCl_3.due to S=1/2 Quantum Ettect." J.Magn.Magn.Mater.140-141. 1673-1674 (1995)
• [文献書誌] T.Takagi: "Naw Partial Disordered Phases with Commensurate Spin Density Wave in Frustrated Triangular Lattice Amtiferromagnets." J.Phys.Soc.Jpn.64. 4009-4027 (1995)
• [文献書誌] S.Mitsuda: "Magnetic Ordering of CuFe_<1-x>Al_xO_2." Physica. B213-214. 194-196 (1995)
• [文献書誌] Y.Ajiro: "Impurity Effect on the Stability of the Ground-State Spin Configuration in Triangular Lattice Antiferromgnet CuFeO_2." J.Phys.Soc.Jpn.64. 3643-3646 (1995)
• [文献書誌] M.Mekata: "Magnetic Structure of Antiferromagnetic PdCrO_2 : A Possible Degenerate Helices in a Rhombohedral Lattice." Physica. B213-214. 221-223 (1995)
• [文献書誌] M.Mekata: "Is Y(Sc)Mn_2 really Spin Liquid?" J.Magrnn.Msgn.Mater.140-141. 1767-1768 (1995)