研究概要 |
1)BEDT-TTF系分子性導体における超伝導の発現機構を明らかにするために、常圧下で最も転移温度の高いκ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]Brの超伝導状態で^<13>C-NMR緩和率の温度依存性を調べた。それによると、転移温度直下にコヒーレンスピークは存在せず、低温で温度の3乗則に従うことから、この物質の超伝導は非S波的あるいは極めて異方的なものであることが分かった。 2)BEDT-TTF系の電子状態を系統的に調べあげる研究を続けた。今年度は、新たに金属相としてβ-(BEDT-TTF)_2I_3、絶縁相として(BEDT-TTF)(TCNQ)を取り上げ、BEDT-TTF伝導層の電子状態を^<13>C-NMRで調べたところ、電子相関の効果が前者よりも後者のほうが大きいことが分かり、前年度までの一連の系の研究で提案していたBEDT-TTF系における伝導性と電子相関の相関を支持する結果となっている。また、κ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]Brの重水素体が、金属-絶縁体転移のまさに境界にあることが、NMRと磁化率の測定から分かった。 3)DCNQI金属錯体の電子状態を、金属イオンの合金化によって制御することを試みた。まず、出発物質として新たに(DI-DCNQI)_2Agの合成に成功し、これが常磁性絶縁体となることと低温で反強磁性へ転移することを、NMR,磁化率、電気伝導度の測定から明らかにした。次いで、合金系、(DI-DCNQI)_2M,(DMe-DCNQI)_2M(MはLiとCuの混合)の磁化率と伝導性が、混合比とともに系統的な変化を示すことが分かった。
|