研究概要 |
本研究では高導電性を示すラングミュアブロジェット(LB)膜としてトリデシルメチルアンモニウム-Au(dmit)_2(3Cl0Au)とアラキジン酸より成る分子膜とビスエチレンジオキシテトラチアフルバレン(BO)とテトラシアノキノン誘導体であるC_<10>TCNQより成る電荷移錯体とアラキン酸より成る分子膜について構造と電子的性質に関する研究を進めた。前者はLB膜としては最も高い電気伝導度を与えるものであるがド-ピング処理を必要とし、不安定であるのに対し、後者は安定で直流的に観測される金属性伝導の温度域も広いものとなっている。物性研究に適する良質膜の作成法を確立後,電子的性質、構造に関する研究を電気伝導率、及びスピン磁化率の温度依存性、遠赤外スペクトル、X線回折及び走査型プローブ顕微鏡観測により明らかにした。特に金属導電性については直流的には温度依存性から非金属化するとみられる場合について、スピン磁化率の測定から局所的な金属性は、低温まで維持されることが明らかとなった。構造解析によりいずれのLB膜においても金属相、絶縁体相、そして両者の中間相の混成となっているが、局所の分子配列には高度の規則性のあることが見出された。こうした構造上の特徴を基に、従来の均質系モデルに対して2次元面内に3相が混在するとする浸透性伝導モデルを構成し、直流的電気伝導の温度依存性の由来を明らかにした。また、上記2系列のLB膜の研究を進める間に金属相を担うBO分子の電子状態とその自己凝縮性を考察することにより、より金属性の高いLB膜が出来うることを考察し、その指針に従ってBO-(MeO)_2TCNQ錯体からなる新しい導電性膜の実現に成功した。
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