研究課題/領域番号 |
06452069
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
宮地 英紀 京都大学, 理学部, 助教授 (90025388)
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研究分担者 |
戸田 昭彦 広島大学, 総合科学部, 助教授 (70201655)
泉 邦英 京都大学, 理学部, 助手 (50025376)
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キーワード | 高分子 / 超薄膜 / 結晶成長 / 構造揺らぎ / 拡散 |
研究概要 |
高分子薄膜固有の結晶-非晶界面・ラメラ表面の非晶について、まずAFM観察をおこなった。試料はアイソタクティックポリスチレン溶液を劈開した雲母上、あるいは炭素膜上にキャストして作製した薄膜である。250℃で5分間融解した後、210℃で結晶化させ、室温に急冷した。劈開した雲母上で結晶化させた結晶では、中央に螺旋転位があり、螺旋成長によって多層化している。結晶全体が下地に向かって潰れ、母結晶の下の結晶の端のステップはがなだらかで、最大4°の傾きしかない。高さのプロフィルで、非晶表面も結晶表面も、同じように厚さに約1nmの揺らぎがある。したがって結晶表面は厚さ数nmの非晶に覆われていることが明らかである。炭素膜上で結晶化させた場合にはフィブリル状の結晶が70nmを超える高さまで成長する。これは、ポリスチレンと炭素の界面の表面張力が小さく、融液薄膜は十分に広がって分子鎖の回転半径より薄くなり、分子鎖の膜面に平行な成分が増加し、分子鎖が膜面に平行な一次核を形成する確率が増大したと考えられる。 膜厚が融液での分子鎖の広がり(〜50nm)程度の一様な超薄膜を水面展開法で作製し多数枚重ねて、X線位置敏感型比例計数管を用いて広角X線散乱強度を測定しバルクの場合と比較したが、結晶性回析、非晶性散乱は共に有意な差は見られていない。しかし、結晶成長速度はバルクの場合と比較して約40%超薄膜の方が遅い事が明らかとなった。超薄膜の下地の影響を調べた結果、ガラス、雲母、炭素、シリコンでは成長速度の差は10%程度であった。したがって、結晶成長速度の低下は超薄膜内に制限された高分子の拡散過程が遅くなった結果であると結論できる。
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