研究概要 |
パルスEPRのselective hole burningの方法をほうれんそうより抽出した光化学系II粒子に使用して電子伝達に関与する常磁性分子間の距離を決めるなど,構造的な新たな知見を提供した。チロシンDと水分解系マンガンクラスターの距離は28-30A,チロシンDとZの距離は30Aである。 第一電子受容体プラストキノンQ_Aの近傍の鉄を亜鉛に置換し,そのESEEM(Electron Spin Echo Envelope Modulation)より2個の窒素核が近傍に結合していることを観測し,1個はヒスチヂン他の1個はアラニンに由来する事を確認した。更にパルスENDORを設備し,この試料から抽出したプラストキノン9ラジカルについて観測し,その分子内の超微細構造に基ずく陽子核を確認した。これらの結果はJCPに出版する(次頁最後の文献)。別に鉄のみ抜いた光合成光化学系IIおよびシアン(CN)処理した試料についてESEEMを観測し,ヒスチヂンがこれらの試料では結合サイトから他のアミノ酸またはシアンに置換される事を見出した。現在この3通りの試料についてパルスENDORの観測を行なって更に詳細な微視的情報を導こうとしている。 水分解機能を阻害した系について反応中心P680へのドナーであるチロシンのZは環境のpHにより著しくEPRの線形を変えることを最近見いだした。このラジカルのパルスENDORで水素結合の陽子の共鳴位置が変わること,また反対側のβ位置の炭素の陽子の超微細構造の変化することを見いだした。微分形で観測するCWのENDORでは信号の線幅は広いため,検出が困難であったが,パルスENDORによってはじめて明確に観測されたものである。これらの結果はチロシンZの電子伝達速度を制御している要因と考えられる。
|