本研究は第4音波に焦点を当て部分溶融体の弾性的性質の解明を目指している。 研究は1)Biotの理論などに基づく地球の様々な部分溶融層での第4音波の観測可能性の検討、及び2)室内実験における部分溶融体での第4音波の特性の研究からなる。 1)ではリゾスフェア下に部分溶融層が拡がっている中央海嶺を想定した構造でのモデル計算により、レイリー波ブランチの表面波の分散曲線中に第4音波が観測される可能性が示された。しかし上下の境界条件、溶融相の形態など未知のパラメーターが大きく観測可能周波数や減衰に影響を与えていることも明らかになった。現状ではこれらの点は他の観測結果から明らかにすることのできないパラメーターであり、室内実験等で追究されるべきテーマである。 2)ではアナログ物質を用いた弾性波速度の計測をとおして第4音波の特性(溶融相の形態の影響、熔融相の連結度の影響、減衰・速度の周波数依存性など)を調べることを目的としている。予備的な実験により部分熔融体は減衰がきわめて大きいことが明らかになった。これは弾性的性質を異にする物質の混合体という点にとどまらず、弾性波と相変化がカップリングしているためであると考えられる。このことは地球内部の地震波の伝播にも重要な知見を与える。しかし第4音波の計測には重大な障害となるために信頼性のある速度・減衰計測のためにはstackingを利用した高精度な信号処理系が不可欠であることが明らかになり、VXI-Busを利用した高速(帯域幅200MHz)・高精度(10bit)の信号処理系を構築した。このセットアップに時間がかかり本格的実験は次年度に持ち越されている。
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