本研究は部分熔融体の弾性的性質と内部構造との関連を明らかにすることを目指した.昨年からの研究で絞られてきた課題は 1)第4音波計測実験系の作製、2)部分熔融状態での弾性波速度・減衰の研究、3)第4音波の検証、4)非静水圧下での挙動と固液分離プロセス、5)変形・流動による内部構造形式の問題 である. 1)に関しては角度分散スペクトロメーター型による計測系を作製した.2)により部分溶融状態の減衰が極めて強く、また高周波成分が著しく欠損しているために(40db以上)十分なスタッキング・信号処理が不可欠となったがこの問題の解決のために当初予定していた高分解能デジタイザーが入手不可能になったために現時点では第4音波の検出は成功していない.この減衰は従来から予測されている固液間の弾性率のコントラストによる散乱効果から期待されるものよりも大きく、相変化に起因した特徴的なものとして注目される.地球における地震波においても同様な効果が期待されるのか今後検討を要するが、たとえば外核のある部分、上部マントル部分熔融層、火山体深部などでこのような減衰が主要なメカニズムであれば興味深い.第4音波が存在できるような固相、液相供に連結している状態では非静水圧力下では変形により異方的なメルトの配置が生じ、異方的なネットワークの形成は浸透率の異方性を生じる.このために均質に分布したメルトが集まり、固液の分離が進行する.平行して進められたCA法によるシミュレーションによりこのプロセスが明らかになった.また流動する均質に混じりあった粘性率の異なる2流体系に拡散などによる物質移動をカップリングさせると特徴的な不安定が生じ、2相の分離が進み異方的な構造が形成されることが明らかになった.これらを地球の上部マントル・部分熔融層の環境に当てはめてみると第4音波が観測に掛かる条件が明らかになった.
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