研究概要 |
地震観測の中でも超長周期の地震記録はノイズが多く,下部マントルや核などの地球深部構造の研究を阻害してきた。これまでにもこの超長周期ノイズの研究はあるが,観測された記録から積極的に取り除くまでには至っていない。そこで我々はこのノイズの原因(気圧が大きく影響しているらしいということはすでに分かっている)や地動に変換される機構を解明し,地震記録から積極的に取り除くための手法を開発することにした。 今年度は,まず,どの範囲の気圧変化をどのように観測すればよいのかに絞って研究を進めた。地震計の超長周期ノイズは記録上で明らかに水平同成分が大きい。観測点にもよるが,時には数十倍にもなる。これは長周期水平動地震計が地面の傾斜変化にひどく敏感なためである。地面の傾動を起こすのはその地域での気圧勾配であろうから,我々は比較的狭い範囲での気圧の勾配を観測する方法を試してみた。 高感度の気圧計を数キロの範囲において観測を行ってみたが、地震計には関係しない数日の長周期変化が大きく,一時間以内の変動を取り出すことは非常に難しいことが分かった。そこで,地震観測点での気圧の勾配を,超高感度差圧計を使って測定することを試みた。この差圧計は10m程度離れた点での気圧差を測ることのできるものである。その結果,10m程度の範囲での気圧勾配(一時間以内の気圧変化としては短周期の変動)は,天気図などから読みとられる広域での気圧勾配の十倍程になることが分かった。この量は,地面にかかる加重の変化として地面の変形を計算すると,地震計のノイズとして現れる地動に匹敵する頃が分かった。 今後はこの気圧勾配の変動はら地動ノイズへの伝達関数を求め,地震の記録から気圧変動の成分を取り除く手法を確立できるよう,研究を進める。
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