研究概要 |
今年度は前年度に実行した高分解能気候モデル(T106S5,triangular t106の1/5セクターのみ)の赤道波の解析をおもにおこなった.これは前年度におこなった実験において赤道成層圏に400日程度のQBO(準2年振動)的な振動が生成されたからである.ただしモデルでは,下部成層圏ではなくて上部成層圏に振動が再現されている点は観測とは異なる.この結果はモデルの欠点ではあるが,QBO的な振動はGCM的な赤道波動を自励的に作るようなモデルでは世界で初めての結果である.このQBO的な振動がどのようにして作られたかを調べる目的でモデルの中の赤道波を詳しく調べた.方法はフーリエ解析が主な方法である. QBO的振動の東風加速はおもに東西波数1(全球的にみれば5),南北モードn=1で周期が2.5日の西向き赤道重力波が生成していることがわかった.これは最近観測でも対流圏でこの様なn=1の赤道重力波がみられることとよい一致を示す.この波は成層圏ではそれほど明確ではない.QBO的振動の西風加速はおもに重力波が生成している.この重力波は赤道のトラップ・モードとは異なるようである.むしろ南北に非対称的な構造をもっている. 中緯度対流圏のjetの生成に関して,中緯度対流圏の波動も調べてみた.ただし主な対流圏の擾乱はセクター・モデルのために実際の大気の擾乱とはかなり異なるようである.東西に伝播する波数1の擾乱が実際の大気では数日周期の高・低気圧波動になるが,セクターモデルの中では非常にゆっくり動く(約周期が20日程度)波動になっている.これは,セクターモデルの欠点で将来グローバルのモデルで走らせないといけないことを示している.
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