研究概要 |
あけぼの衛星では1時間程度の連続時間観測されるオメガ信号の伝搬ベクトル方向ならびに伝搬時間と衛星軌道に沿った電子密度の同時測定が可能であるが,オメガ信号のレイトレイシングを行なうことにより,これらの観測結果と一致するような地球磁気圏,特にプラズマ圏の電子密度分布を衛星軌道毎に推定する手法を開発し,より現実に近い電子密度分布モデルの提案を行なうことを目的としている. 昨年度には,観測値と理論値を非線形最小2乗法でフィッティングするアルゴリズムを完成させ,あけぼの衛星の1軌道毎にグローバルな電子密度分布が求められることを示した.しかし基準高度(1000km)以下の電離圏領域については荒い近似をしたモデルを用いていた.今年度は,電離層領域について国際電離圏標準(IRI)モデルを参照することで,E層からF層領域の電子密度分布をより現実的にする方法を新たに開発した. さらに,我々の電子密度分布モデルは拡散平衡モデルは拡散平衡モデルを基礎にしているが,より一般的なプラズマ圏内プラズマ密度分布モデルであるSUPIMと呼ばれるモデルで表現された電子密度を,我々のモデルで十分表現可能であること,また擬似観測データを用いて,我々の推定アルゴリズムによる電子密度分布推定の精度評価を行なうことで,観測データからプラズマ圏内全体の電子密度が非常に良い精度で推定可能であることも示した. 最後に,あけぼの衛星で観測された約100パスのデータについて,本研究課題で開発された電子密度分布推定アルゴリズムの適用し,各軌道毎のプラズマ圏全体の電子密度分布の推定を行なった.あけぼの衛星の観測データは現段階で2万パスを越え,なお観測は継続中のため,本研究課題で開発された手法を今後これらのデータに適用することは,プラズマ圏全体の電子密度分布の日変動などの研究を行なう上で,非常に有効であると考えられる.
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