研究概要 |
3年間にわたる本研究において,概算要求で設置された質量分析計と本科学研究費備品費で購入したフィラメントの焼きだし装置を利用して,岩石・鉱物からのRb,Sr,Sm,Ndの抽出方法およびSrとNd同位体組成測定方法の確立を行った.国際・国内の標準試料をもちいてのデータの精度や変動の検討を行ない,これらの機器を用いてのデータは誤差も極めて小さく,十分信頼おけるものであることが明らかとなった.結果は当大学理学部紀要に報告した.これらの基礎的研究にあわせて,本研究の課題についても多くの成果を得た. 西南日本に産する白亜紀塩基性深成岩類と一部の火山岩類についてのSr・Nd同位体組成を広域的に測定し,これらとその後に引き続いて起こった大規模な酸性火成活動との関連性について検討を行った.塩基性岩類のSr・Nd同位体組成は酸性岩類が示す広域変化と対応した関係を示し,山陰側から中央構造線に向かってSrは高く,Ndは低くなる.しかし,同一地域で比較すると塩基性岩類は酸性岩に対して,常にSr同位対比は低く,Nd同位対比は高い傾向を示す.このことはマントルあるいは最下部地殻(MASH zone,Hirdreth and Moorbath,1988)および下部地殻物質いずれにも地球化学的に広域的な変異があったことが示唆される.その成果は1996年4月に行われた日本地質学会で発表し,現在論文として公表すべく執筆中である.そのほか,領家帯の塩基性岩類の年代がジュラ紀であること,領家帯を中心とした地殻・マントルの白亜紀から新第三紀にかけての地球化学的性質の時間変化についても検討し,領家帯下のマントルは新第三紀までに地球化学的に大きく改変されたことを示し,この結果についてはすでにに公表した.
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