研究概要 |
本研究計画の最初の2年間の間に,岩石や鉱物の粉末試料からRb・Sr・Sm・Ndを抽出する方法を確立し,同時に最近地球資源環境学教室に設置された表面電離型質量分析計(MAT262)を用いてSrおよびNd同位体組成の測定方法を確立した。国際的・国内的な標準試料についてのSrおよびNd同位体組成の測定を行い,それらは極めて良い精度で,長期間にわたっても変動の少ないデータを与えた。これらのデータは,島根大学の理学部紀要および地球資源環境学研究報告に3編の論文としてまとめ公表した。 この質量分析計を用いて,西南日本白亜紀の塩基性ないし中性の火山岩類および貫入岩類についての岩石学的研究と同時にSrやNdの同位体組成を広域的に測定した。これによって,西南日本にこれら塩基性や中性岩の活動に引き続いて活動した大規模な白亜紀の酸性火成岩類との成因関係について検討を行った。その結果,これら塩基性ないし中性岩類のSrやNd同位体組成には酸性岩類と調和的な広域変化があることが明らかとなった。すなわち,山陽側では高いSr同位体組成,低いNd同位体組成を,山陰側では,低いSr,高いNd同位体比を示し,花崗岩などの酸性火成岩類の広域変化と極めて調和的である。これらのデータから,塩基性・中性岩類のマグマソースであると推定される上部マントルおよび最下部地殻および酸性岩類のマグマソースである下部地殻は白亜紀当時山陰側に比べて山陰側がよりエンリッチした地球科学的性格を持っていたことが明らかにされた。
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