解剖学・発生学・分子生物学的資料に基づく現生・化石頭足類の系統進化学的研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06452097
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 棚部 一成 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (20108640)
• 研究分担者: 重田 康成 国立科学博物館, 地学研究部, 研究官 (30270408) ; 遠藤 一佳 東京大学, 大学院理学系研究科, 助手 (80251411)
• キーワード: 頭足類 / 解剖学 / 発生学 / 分子生物学 / 系統進化

研究概要

発生学的研究:棚部および重田は、現生・化石頭足類の胚殻の外部形態や内部構造を比較検討し、現生・化石オウムガイ類とアンモノイド・鞘形類の胚殻は、サイズや基本構造の違いにより互いに明瞭に区別できることを明らかにした。さらに、アンモノイド類の胚殻の内部・外部形態や構造は、亜目レベルで安定していて高次の分類に有効であることや、古生代のアンモノイド類と中生代のアンモノイド類では胚殻の微細構造や表面装飾が大きく異なることを示した(Tanabe,Landman & Mapes,1994;Landman,Tanabe & Shigeta,in press)。
比較解剖学的研究:棚部は米国の研究者と協力して、石炭紀アンモノイド類の顎、歯舌の形態を、他の頭足類のものと比較した(Tanabe & Mapes,in press)。さらに、保存の良い中・古生代のアンモノイド類の殻内面に残された筋肉痕を記載した。これらの研究により、アンモノイド類の歯舌(1列が7歯)と筋肉痕(腹側に1列)は鞘形類のものと類似し、オウムガイ類の1列9歯の歯舌および筋肉(左右1対)とは明瞭に識別できることを指摘した。
分子生物学的研究:遠藤は原始的体制を残した生きた化石オウムガイの軟体部組織(肝臓、外套膜)からmtDNA, 核DNA,RNAを分離・抽出し、塩基配列を決定しつつある。現在、塩基配列の解析が完了しているマダコ・ヤリイカのデータと比較・検討中である。

研究成果

• [文献書誌] Landman,N.H.,Cochran,J.K.,Rye,D.M.Tanabe,K.and Arnold,J.M.: "Early life history of Nautilus:evidence from isotopic analysis of aquarium-reared specimens." Paleobiology. 19. 40-51 (1994)
• [文献書誌] Tanabe,K.,Landman,N.H.and Mapes,R.H.: "Early shell features of some Late Paleozoic ammonoids and their systematic implications" Transactions and Proceedings of Palaeont.soc.Japan,N.S.173. 384-400 (1994)
• [文献書誌] Tanabe,K.,Shigeta,Y.and Mapes,R.H.: "Early life history of Carboniferous ammonoids inferred from analysis of shell hydrostatics and fossil assemblages." Palaios. 10(印刷中). (1995)
• [文献書誌] Tanabe,K.and Mapes,R.H.: "Jaws and radula of a Carboniferous ammonoid Cravenoceras." Journal of Paleontology. 68(印刷中). (1995)
• [文献書誌] Endo,K.,et al.: "Re-interpretation of terebratulid phylogeny based on immunological data." Palaeontology. 37. 349-373 (1994)
• [文献書誌] Endo,K.,Reyment,R.A.and Curry,G.B.: "Taxonomic relationships in Terebratulina(Brachiopoda)established by multivariate morphometrics" Revista Espanola de Paleontologia. (印刷中). (1995)