研究課題/領域番号 |
06452098
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研究種目 |
一般研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
岩石・鉱物・鉱床学
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
末野 重穂 筑波大学, 地球科学系, 教授 (30110513)
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研究分担者 |
黒沢 正紀 筑波大学, 地球科学系, 助手 (50272141)
栗田 敬 東大大学院理学研究科, 地球惑星物理学, 助教授 (00111451)
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研究期間 (年度) |
1994 – 1995
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キーワード | 加速器 / プロントビーム / 相転移 / 結晶欠陥 / 炭素物質 / DLC (diamond like carbon) / イオン線照射 / ダイヤモンド |
研究概要 |
本研究は筑波大学加速器センターのビームライン上に新たに設置した「試料照射用温度圧力環境可変チェンバー」を用いて、プロトン線照射実験を行った。照射試料としてPAH物質などの星間dust類似の炭素質固体物質を用いる予定であったが、最初の実験試料としては、より単純な炭素のみよりなる各種の物質であるグラファイト、石炭、人工及び天然産ダイヤモンドなどの各種炭素材料から行った。照射実験は、梯子状試料ホルダー上の各種試料について色々のエネルギーと電流密度のプロトンビームを用いて行った。その実験においてダイヤモンド試料でルミネッセンス発光が観察された。ダイヤモンドのイオンルミネッセンスについてはほとんど報告がないが、ルミネッセンスのスペクトル変化は試料物質内の欠陥の発生と変化の検出に敏感であろうとの判断で、研究の一部として[プロトン照射によるダイヤモンドのイオンルミネッセンスの研究]を行った。ダイヤモンドのカソードルミネッセンスは確立した研究手法であるので、イオンルミネッセンスと対比させながら、試料を窒素温度近くまで冷却させて照射効果を研究した。その結果、当初のスペクトル自体はカソードルミネッセンスと同じであっが、長時間照射後には新たなスペクトルの生成など、これまで報告のなかった天然ダイヤモンドと人工単結晶ダイヤモンドのイオンルミネッセンスを初めて観測することに成功した。この手法はPIXEとの併用により、物質内に存在する不純物欠陥の構成元素とその形態を同時観察できる極めて有効な分析方法である。 照射後のグラファイト試料は、FTIR及びラマン散乱、ESCA等の光学的手法で観察を行った。その結果照射によりグラファイト構造が不定形炭素へ変化をしたり、それとは逆に不定形炭素がグラファイト構造に変わる現象が観察された。しかしながらグラファイト構造や不定形炭素からダイヤモンド構造への変化は今のところ確認されていない。これは結晶の変化が数オングストロームの範囲内でのみ発生している可能性がある。cosmic rayとの相互反応より生成されたと考えられる隕石中のダイヤモンドはオングストロームサイズである。光学的手法によりダイヤモンドが確認されないことから、本実験により生成されるダイヤモンドも隕石中に含まれるダイヤモンド同様オングストロームサイズと考えられる。最近放射線照射による炭素質物質内でのミクロ・ダイヤモンドの生成が話題に上っていることから、本研究でも、照射後の炭素物質を過塩素酸により蒸発させ、その残差物質について観察を行いつつある。照射後の試料の形態・粒子径の変化のTEM・SEM観察も同様に行いつつある。残念ながら、照射試料についての観察が、その途上にあるため現在は報告できる内容が未だ乏しい。ビームの電流密度が不足である事も考えられ、照射実験を継続すると共に、試料としてPAH状物質も加えて行う予定である。
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