研究概要 |
本年度は,CaO-MgO-Al2O3-SiO2系結晶と融体の両者に適用可能な,高精度で且つ簡単な原子間ポテンシャルを求めることを主目的にした. 結晶,融体のポテンシャルエネルギーを,クーロン項,ファンデァワールス引力項,及び反発項から成る二体間相互作用の和で近似した.必要なエネルギーパラメータは,CaO-MgO-Al2O3-SiO2系の種々の結晶についての実測の結晶構造,圧縮率,及び熱膨張率データが,分子動力学(MD)法を用いて可能な限り再現できるよう,最小二乗法等を用いて求めた.CaO-MgO-Al2O3-SiO2系結晶として,マントル鉱物を含む27種の結晶を,又融体としては,エンスタタイト,ウォラストナイト,ディオプサイド,及びアノ-サイト組成をとりあげ,それらの構造と物性を単一のポテンシャルモデルで記述することを試みた. 結晶構造における実測値と,得られたポテンシャルモデルを使用したMD計算値の比較は,極めて満足ゆくものであった.即ち,27種の結晶の全てについて,MDを用いて求められた構造が,実測の結晶対称性(空間群,結晶格子内の原子の席対称性など)を再現することに成功したのみならず、格子定数,最近接原子間距離の両者共,MD計算値は高精度でそれぞれの実測値を再現した.加えて,上記4融体についても,1900K,常圧下における密度,体積弾性率,体積熱膨張率の実測値とMD計算値との一致は,結晶同様極めて高精度であった. 実験的研究については,ダイヤモンドアンビルを用いた高圧下でのX線結晶解析の準備を現在進めている.
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