研究概要 |
地殻,マントルの最重要な構成物であるNa_2O-CaO-MgO-Al_2O_3-SiO_2系に属する種々結晶と融体の両者に適用可能な標準的かつ高精度なポテンシャルモデルを求めることに成功した.このことにより,鉱物組成がダイナミックに変化する系,ケイ酸塩融体と結晶が共存する系などを取り扱うことが可能になった. 得られたポテンシャルを用いて、ディオプサイド結晶と融体の高温高圧下における密度逆転の可能性をMDシミュレーションを用いて調べた.その結果,1900Kの等温条件下で,この系では,11GPa付近で密度逆転が起こることを見出すとともに,高圧下におけるこの密度逆転が,結晶と融体における陽イオンの配位数の圧力依存の差により解釈できることを示した. 更に,下部マントルの主成分と考えられているMgSiO_3ペロフスカイトについて,下部マントルの温度圧力条件下における固相と液相の間の密度逆転の可能性をMD法を用いて調べた.その結果,この系では下部マントル底部の圧力(136GPa)に至っても,密度逆転は見出されなかった. 又,MDシミュレーションを用いて,下部マントル内における未知Ca,Alケイ酸塩超高圧相の存在の可能性を現在詳細に検討中である.加えて,ダイヤモンドアンビルセルを用いた高圧下におけるX線結晶解析とプロファイルフィッティング法による,マントル鉱物の圧縮率の精密決定を現在進行中である.
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