1.磁場誘起のtypeI→typeII転移 Mn濃度10%程度の試料のFaraday配置下での磁気光吸収測定により、typeI→II転移が起こると予想される磁場付近での量子井戸内の励起子準位のエネルギーを調べたところ、転移磁場の前後で励起子エネルギーの磁場依存性にキンク等の特徴的な構造は認められなかった。これは以前フランスのDeleporteらのグループによる報告と相反する結果であるが、我々は有効質量近似に基づく計算を行い、typeI→II転移磁場の前後において励起子エネルギーは磁場に対して滑らかに変化することを明らかにし、実験結果が矛盾なく説明できることを示した。一方、Mn濃度の比較的大きい(30%程度)の試料に対しては、一巻きコイル法によるパルス強磁場下での吸収測定を行い、120T付近において、typeI→II転移と思われる励起子ピークの特徴的振舞いを見い出した。 2.超格子界面のMn^<2+>の磁化 量子井戸層に閉じ込められた励起子の磁場中でのZeeman分裂エネルギーの大きさが、励起子波動関数の障壁層への染み出し量から予測されるよりも大きいことを見い出した。その原因として、障壁層界面付近のMn^<2+>の磁化が、バルク結晶中のMn^<2+>と異なる振舞いをするためと考えられ、その原因としては超格子界面に位置するMn^<2+>の低次元性による反強磁性相互作用の抑制及び界面でのMnの拡散の2つ要因が考えられることを指摘した。
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