研究概要 |
1.磁場誘起typeI-typeII転移 CdTe/Cd_<1-x>Mn_xTe超格子における磁場誘起typeI-typeII転移に関しては、昨年度までの研究において、Mn濃度が約30%と比較的大きい試料のパルス強磁場下での吸収測定でheavy hole励起子の吸収強度の減少及びエネルギーのred shiftという明瞭な変化を観測し、計算との比較によりこれらの変化がtypeI-typeII転移に伴うものであることを確認し、転移磁場から価電子帯不連続量が30〜40%と見積もられた。一方、Mn濃度が10%程度と比較的小さい試料で、強磁場下吸収測定を行い、35〜40Tにおいて、Faraday配置では励起子エネルギーのred shiftを、またVoigt配置では吸収強度の減少を観測した。これらの変化は、上記のMn濃度30%の試料で観測された現象と似ていることから、typeI-typeII転移に伴うものであると考えられる。 2.ヘテロ界面におけるMnの拡散 昨年度に引き続き、CdTe/Cd_<1-x>Mn_xTe界面における急峻性の欠如(界面のbroadening)による界面でのMn^<2+>磁化の増大を原因とする励起子の巨大Zeeman分裂エネルギーの増大に焦点をあて、研究を行った。様々な成長条件で作製した試料において、巨大Zeeman分裂エネルギーの測定から界面のbroadeningの程度を評価したところ、broadeningを生じる原因はCd/Te fluxの供給量比により大きく異なることがわかった。すなわち、 ・Te flux過剰供給下で成長させた試料では、界面のbroadeningの生じる原因は主としてCd,Mn原子の熱拡散であり、broadeningの程度は成長温度により大きく異なり、また試料作製後の熱アニールにより、顕著に増大する。 ・Cd flux過剰供給下で成長させた試料では、界面のbroadeningの生じる原因は主として成長表面におけるMnの編析であり、broadeningの程度は成長温度いあまり依存せず、また試料作製後の熱アニールによってもあまり増大しない。
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