研究課題/領域番号 |
06452105
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田中 肇 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (60159019)
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研究分担者 |
山本 潤 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (10200809)
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キーワード | 動的対称性 / 相分離 / ダイナミクス / 動的光散乱 / パターン形成 / ネットワーク型相分離構造 / 臨界揺らぎ / 粘弾性効果 |
研究概要 |
申請者らは、高分子水溶液系の相分離現象の研究において、高分子リッチな粘弾性相と溶媒リッチな液体相という全く力学的性質の異なる2つの相に相分離する場合、従来の常識に全く反して粗大化を伴わない安定な、粒子状異常相分離現象が起こることを見出した。我々はこの相が、《動的対称性(成分間の分子ダイナミクスの対称性)》という新しい概念により包括的に説明できると考えた。本研究では、高分子溶液系の安定領域の臨界点近傍におけるゆらぎのダイナミクスや、準安定・不安定領域でみられる相分離現象に対する粘弾性効果の影響を測定し、この《動的対称性》の概念を確立することを目的とした。 平成6年度において本科学研究費により購入した設備備品により開発した、(a)動的光散乱測定装置、(b)静的光散乱測定装置を用いて、当該年度は粘弾性効果の普遍性に対する実験を遂行した。 普遍性の検証:《動的対称性》の概念の普遍性を探るため、高分子溶液系に限らず、高分子混合系、ミセル溶液系などの複雑流体に関しても、相分離ダイナミクスの研究を行い、《動的対称性》が高分子系に特有のものなのか、より広い物質群に共通の普遍的な現象なのかについての検証を行った。開発した2つの測定装置を用いて、(1)動的光散乱を用いた安定領域でのダイナミクスの研究、(2)静的光散乱を用いた不安定性領域での相分離パターン形成のダイナミクスの研究の2つを同時に遂行した。これにより、同一の系に対して相補的な情報を抽出することができた。現在の研究成果には、我々の考え方を強く肯定する結果が得られていると考えている。 工学的応用:上記の物理現象の工学的応用として、粘弾性効果により発現するネットワーク型相分離構造などを積極的に用いることによりポリマーアロイの新しい構造制御法を考案した。 以上、研究計画は、現象のモデル化を含めて、概ね順調に完了した。
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