研究概要 |
本研究の目的は、フェムト秒光パルス列の周期を1ps以下の周期で制御できる手法を開発し、この光パルス周期を有機非線形光学材料の特定振動モードに一致させ、選択的に特定振動モードを増幅し、その際の非線形性のふるまいを明らかにすることである。そこで、本年度は、1.THz繰り返しフェムト秒光パルス列発生実験、2.フェムト秒光パルス任意波形整形のための空間位相変調器制御プログラムの作製、3.フェムト秒時間分解間干渉計によるCS_2の非線形屈折率測定、およびその発現メカニズムの解明を行った。 ・1.空間位相変調器、回折格子、フーリエ変換光学系を用いて、パルス幅〜100fs,発振波長〜800nmのチタンサファイアレーザーパルスをパルス整形するための光学系を構成し、実際にTHz程度の繰り返し周波数を持つフェムト秒パルス列の波形整形に成功した。この整形後の光パルス波形は、試作した相互相関器の相関波形の形で観測している。 ・2.任意の所望フェムト秒パルス波形を得るために、どのように空間位相変調器(128ピクセル)を変調すればよいかということを知ることは重要である。この指針を得るための解析プログラムを作製した。これにより、物質系に合った特定共鳴振動周波数を選択励起する光パルス列を得ることができる。 ・3.チタニウムサファイアレーザーを光源とした、フェムト秒時間分解干渉系を作製し、この装置により、CS_2液体の非線形屈折率のフェムト秒時間分解測定を行った。この結果、CS_2は、電子分極の他、分子間相互作用による分極(緩和時間〜100fs)、分子回転による分極(〜1ps)に起因する非線形屈折率を持ち、とくに、直交配置における分子分極に起因する成分は負となることを明らかにした。この負の非線形屈折率を用いた正常分散領域におけるソリトン光パルス圧縮に関しても現在、数値解析を行っている。
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