超高速半導体レーザ光メモリの研究

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06452125
• 研究機関: 山形大学
• 研究代表者: 河口 仁司 山形大学, 工学部, 教授 (40211180)
• 研究分担者: 高橋 豊 山形大学, 工学部, 講師 (00260456) ; 松下 浩一 山形大学, 工学部, 助教授 (70124625)
• キーワード: 半導体レーザ / 光双安定 / ピッチフォーク型光双安定 / 面発光半導体レーザ / 歪量子井戸構造半導体レーザ / 全光型フリップ・フロップ動作 / 偏波面スイッチング

研究概要

平成6年度は、半導体レーザの発振偏波の双安定スイッチングに関する研究を系統的に行ない、以下の3点について具体的な成果を得た。
(1)外部共振器を付加した半導体レーザの、偏波面双安定スイッチチングの速度は共振器の光周回時間で決まる。高速動作を実現するため、短い共振器(約1cm)を用いてピッチフォーク型双安定を実験的に実証した。又、トリガ光パルスの幅が共振器長に比較して短い場合、スイッチング動作を解析するためには、光の空間分布を考慮した進行波型のレート方程式を用いる必要がある。従来のレート方程式を発展させ、解析によりスイッチング特性を明らかにした。その結果、面発光半導体レーザを用いることにより、100Gbit/s以上のフリップ・フロップ動作が可能なことがわかった。
(2)GaAsP/AlGaAs歪量子井戸構造半導体レーザの電極を共振器方向に3分割し、各電極に注入する電流を変化することにより、TEモードとTMモードに対する利得を制御した。主電極の電流を一定にしておき、副電極に電流を注入していくと、初めはTEモードで発振するが、ある電流値でTMモードに切り替わり(第一交差点)さらに電流を増すと再びTEモードに切り替わる(第二交差点)。この第二交差点においてはヒステリシスが見られた。又、第一交差点近傍で光入力による偏波面のスイッチを実現した。
(3)二つの直交する発振モードに対し利得がほぼ等しいという特徴を有する、面発光半導体レーザを用いて実験的検討を行なった。面発光半導体レーザの動作温度を精密に制御し、偏波面で分解した電流-光出力特性にS字型双安定特性を得た。動作条件を変え、外部から発振光に近い波長をもつ光を注入することにより、ピッフォーク型の双安定も実現した。又、ピッチフォーク型双安定特性を用いて、外部から2つの直交する偏波をもつ光パルスを注入し、全光型フリップ・フロップ動作を実現した。

研究成果

• [文献書誌] 高橋豊、イイプシャリフヒダヤット、河口仁司、田中秀尚: "GaAsP/AlGaAs歪量子井戸LDの光注入によるTE/TMモードスイッチング特性" 第55回応用物理学会学術講演会 講演予稿集. 19p-R-15. 912 (1994)
• [文献書誌] 村上睦、河口仁司、高橋豊: "進行波型レート方程式を用いた偏波面双安定半導体レーザの解析" 第55回応用物理学会学術講演会 講演予稿集. 19p-R-16. 913 (1994)
• [文献書誌] 河口仁司: "半導体利得媒質中の4光波混合とその応用" 応用物理. 63(12). 1219-1226 (1994)
• [文献書誌] H.Kawaguchi,T.Irie 他: "Pitchfork bifurcation polarization bistability in laser diodes with external cavities" IEEE J.Quantum Electronics. 31(3). 447-455 (1995)
• [文献書誌] H.Kawaguchi,I.S,Hidayat 他: "Pitchfork bifurcation polarization bistability in vertical-cavity surface-emitting lasers" Electronics Letters. 31(2). 109-111 (1995)
• [文献書誌] H.Kawaguchi,I.S.Hidayat 他: "All-optical flip-flop operation of polarization bistable vertical-cavity surface-emitting lasers" Technical Digest,1995 Conference on Lasers and Electro-Optics. CTuQ2. (1995)