色の見えのモードは簡単に言うと、その色が物体色に見えるか光源色に見えるかである。物体色はその字の如く物体の色である。これに対し物体の色ではなく光そのものの色が光源色である。色モード変化のメカニズムを我々は照射認識視空間Rという概念を導入して研究した。私たちがある空間を見ると、そこがどのような明るさの空間か、ほとんど一瞬のうちに認識することが出来る。この認識のことを照明認識視空間と定義した。この認識に至るにはその空間の諸物体の見えやその空間を照明する光源などの情報が用いられるが、それを初期視覚情報と定義した。Rには大きさがある。明るく認識したRはサイズが大きい。今、空間の中のある物体がスポット照明されると、照明が弱いときにはその物体の表面は物体色として、自然に認識される。局部照明の強さを上げていくと、やがてその表面の見えは不自然になり、表面が輝いて見え、不自然、明るすぎる、等の認識となる。このときの見えが光源色である。すなわち、局部照明された表面の明るさがRのサイズを超えたとき、表面が光源色に変わるのである。そこで本研究ではまず、Rのサイズを局所照明認識閾法で検討した。そして、空間を照明する主照明が強いほどRは大きいことを証明した。ついで、Rの形成過程を研究した。窓を介した2つの空間で、自空間から他空間を観察し、窓の大きさを変えることによって他空間の初期視覚情報を調節し、どのくらいの窓の大きさで他空間の照明認識視空間が形成されるかの検討をした。今回は、その検討にカラーネ-ミング法を採用した。これによって初期視覚情報の増大と共にRが形成されていく様が定量化できた。最後に、2つのRの間の関係を、他空間におかれた色票の色を観察することによって検討した。自空間の照度が高くなるほど、またそれへの初期視覚情報が増大するほど他空間への影響が大きいことが明らかになった。また、2つのRの間の連続性についても研究し、住宅の内から外を見た場合には自空間は他の空間の照度の約10分の1のとき連続性が最大になることを明らかにした。
|