今年度は、Si基板上へのLiNbO_3 (LN)結晶膜堆積とこれを用いた各種導波形素子およびSi-ICチップ間の機能的な光相互接続の具体的な検討に主眼を置いて検討を進めた。 1.ArFエキシマレーザを用いて溶融石英板、SiO_2/Si上にLN膜堆積を行った。しかし、堆積膜は基板を反映してアモルファス/多結晶状になり、X線回折においてもC-軸配向性を示す鮮明な(006)ピークは現われない。これに関しては、バッファ層として窒化シリコン膜を用い、O_2+O_3ガス雰囲気中で膜堆積を行うことによって、C軸配向性を示すLN膜が得られる見通しである。 2.再び格子不整合量8%のサファイア基板を用いてLN膜のC軸配向性を検討した。ターゲットのLi含有量を増加することにより(Li/Nb=3)、堆積膜のC軸配向性を改善できることを明かにした。 3.さらに、レーザ/増幅機能をもつLN膜を得るために、0.2wt%Nd_2O_3をドープしたLNターゲットを用いて膜堆積を試み、C軸配向性に優れかつstoichiometryなNd:LN膜を得た。これについては、膜面におけるNdの遊離・折出を回避して低損失な光導波路膜を作製することが課題である。 4.LN膜を用いた機能的光相互接続については、誘電体装荷光導波路とグレーティングを併用し、EO変調/スイッチング素子を組み入れる方式を検討して、その有用性を確認した。 以上のように、レーザ蒸着によるLN結晶膜光導波路作製について、世界に先駆けて多くの重要な知見が得られ、これにより機能的光相互接続の基礎データが蓄積できた。
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