本研究の目的は、(1)レーザ蒸着法(UVレーザアブレーション)によるLiNbO_3(LN)結晶膜のヘテロエピタキシャル成長技術を確立し、(2)この結晶膜に光を導波して変調・スイッチングを行うことにより、(3)Si-ICチップ間の機能的な光相互接続の可能性を示唆することにある。この目的に沿って研究を進め、下記のような研究成果を得た。 1.ArFエキシマレーザアブレーションによるCカットサファイア基板上へのLN結晶膜堆積について検討し、EO光導波路膜として利用できることを実証した。 2.まず、LiリッチLNターゲット(Li/Nb=2.1)を用いることにより、ほぼストイキオメトリでC軸配向性に優れたLN膜が堆積できる。また、膜表面の粒状の荒れ(droplet)はターゲットと基板間距離を大きくすることで(〜40mm)で回避でき、伝搬損失5dB/cmのLN光導波路膜を得た。 3.さらに、堆積したLN膜に周期電極を装荷して導波形光偏向器を構成してLN膜のEO定数を評価した結果、r33=4.9pm/Vを得た。これはバルクLNの約1/6であり、これによってレーザ蒸着によるLN光導波路膜堆積の有用性を初めて実証した。 4.上記の結果を踏まえて、LN膜にレーザ/増幅機能を付与するために、希土類(Nd)ドープLN膜の堆積を試みた。ターゲットとして0.2wt%Nd_2O_3ドープLiリッチLN焼結体(Li/Nb=3)を用いて、サファイア基板上に優れたC軸配向性を示しかつストイキオメトリなLN膜が堆積できることを明かにした。 5.上記の研究と並行して、Si-ICチップ間の機能的光相互接続について検討した。誘電体装荷法でLN膜チャネル光導波路を形成してEO変調器・スイッチを構成し、TiO_2膜グレーティングで光路変換を行うタイプについて検討し、そのフィージィビリティを確認した。
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