本研究は、平板導波路あるいはチャネル導波路を用いた光第2高調波発生(SHG)における位相整合法に関し、最も基本的な膜厚制御をLB膜の成膜性に着目して行われ、以下のような成果を得た。 無機非線形光学結晶上へのLB膜積層:負の1軸結晶である、水に難溶性のLiNbo_3基板上に正の1軸結晶であるLiTaO_3結晶をエピ成長させた3層構造導波路に、水面上で安定なL膜を形成するN-dococyl-N′-(4-nitrophenyl)ureaをZ膜として積層した。3層導波路を使用した理由は、正負の結晶の組み合わせにより緩い位相整合許容幅が得られるからである。実際、実効的な許容幅を45nm(通常、1nm以下)に広げることができた。LiTaO_3結晶は表面が親水性であるため、積層にはステアリン酸を中間層として挿入する必要があることも判明した。 有機結晶に対する設計:2次の非線形光学性能としては中庸であるが、透明性の高い有機(-)2-(α-methylbenzylamino)-5-nitropyridine結晶等を対象として、与えられた薄膜非線形結晶膜厚および基本波波長1064nmに対して、位相整合SHGのためのLB膜積層数および非線形結晶膜厚の位相整合許容幅に関する理論的考察を行い、以下の設計指針を得た。まず、単純な3層構造に対する積層効果を調べた結果、薄膜結晶の厚さが353〜368nmの範囲において位相整合SHGが得られることがわかったが、位相整合膜厚許容幅が狭く、この範囲を連続的に結ぶことが不可能であった。そこで、バッファー層を設けた結果、205〜278nmの範囲において連続的に位相整合SHGが達成できることが判明した。薄膜非線形結晶の厚さがこの範囲にあれば、4層目のLB膜の積層により位相整合を満足させることが可能なのである。実験的な検証については、現在、研究を続行中である。
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