本研究では、高精度、多機能の動的光散乱スペクトル測定システムおよび広帯域の周波数域非線形誘電緩和スペクトル測定システムを開発し、両者を用いて各種の強誘電性液晶および反強誘電性液晶の光学的・電気的緩和スペクトルの測定を行なった。まず、動的光散乱法を強誘電性液晶の位相モードのダイナミックス測定に適用し、散乱光強度の相関周波数の分散を得ることにより、螺旋のピッチおよび弾性定数と粘性係数の比の精密測定が可能となった。同時に、応答関数測定法である線形誘電緩和スペクトルを用いて緩和時間を求めた結果、動的光散乱法(揺らぎ測定法)との等価性が確認された。さらに、螺旋軸と垂直方向に直流電場を印加した状態では、螺旋の波数の半分の波数において相関周波数の分散にギャップが生じること、このギャップが電場強度に比例して増大することなどを見いだし、電場によるソリトン格子の誘起という静的構造変化がダイナミックスに及ぼす影響を直接測定することができた。一方、非線形誘電緩和法を反強誘電性液晶に適用し、その相転移および各スメクティック相におけるダイナミックスに関して新たな知見を得た。まず、反強誘電相では3次非線形誘電スペクトルを測定することによって、従来、線形誘電緩和では検出できなかった反強誘電相におけるGoldstoneモードの測定が可能となった。また、SmA相と他のスメクティック相との臨界点近傍ではSmA相における非線形誘電率の臨界挙動を観測し、Landauの現象論による結果と比較することにより相転移の次数や現象論的係数の決定が可能となることを示した。さらに、これを用いて反強誘電性液晶の現象論的係数と分子構造との相関についての議論を行なった。以上のように、本研究では強誘電性・反強誘電性液晶の構造およびダイナミックスに関する重要な基礎的・応用的知見が得られるとともに、新たに開発された測定法の有用性が示された。
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