研究概要 |
本研究の当初において、横方向の熱伝搬を検出することを念頭に置いたが、何分にも発生する熱量が小さく直接求めることは雑音との戦いであった。今年度は石英基板という熱抵抗の極めて大きな材料を用いたこと、Si薄膜という熱抵抗の小さい薄膜材料を用いたことで分離の精度が上がり、熱抵抗の並列接続という考えを用いることが出来、基板上の薄膜熱拡散率の測定に成功した。 本研究の特色は基板上に堆積した薄膜において、薄膜に吸収された光により発生した熱は薄膜と基板を通って横方向に伝搬する。我々は、熱の検出にz-cutのLiNbO_3焦電トランスジューサを用い、1次元伝搬する各種バルク板状試料の熱拡散率の測定法を確立し、熱拡散率を測定した。Si : 0.87, Cu : 0.96, InP : 0.44, GaAs : 0.25, Ta : 0.24[cm^2/s]と求まり、誤差は何れも文献値と1〜5%程度であった。 次に石英基板に堆積した約1μmのSi薄膜の熱拡散率を求めた。光を照射した位置、つまり熱源からの温度変化は基板と膜の熱抵抗の並列接続と考えることができる。膜表面に光を照射し裏面で温度勾配を観測すれば石英基板の熱拡散率が7.18×10^<-3>[cm^2/s]と求まり、膜表面で温度勾配を観測すれば膜と基板の並列熱抵抗からSi薄膜の熱拡散率は0.65[cm^2/s]とも止まった。これは多結晶Si膜の値としては妥当である。以上述べたように石英基板およびその上のSi薄膜の熱拡散率を求めることに成功した。
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