研究概要 |
本年度は,高強度・高弾性繊維として,アルミナ繊維,アラミド繊維を選び,単繊維の機械的性質に及ぼす水環境・真空環境・電子線照射効果について検討を加えるとともに,原子間力顕微鏡による原子オーダの繊維表面の3次元形状を評価して,損傷と変形機構についてナノメータオーダより検討を加えた。アルミナ繊維の引張強度は水環境の影響を強く受け,真空環境,大気中,湿潤環境の順に環境中の水分量が多いほど強度が低下すること,また,引張強度が小さく,環境にさらされる時間が長くなるほど強度が低下することを明らかにした。さらに,繊維の強度の環境依存性を反映して,アルミナ繊維一方向強化アルミニウムの真空環境中の繊維方向引張強度と疲労強度が大気中強度に比べて大きく上昇することを示し,複合材料の強度は特に試験片表面の影響を強く受けることを明らかにした。一方,アラミド繊維については,吸水あるいは真空環境にさらすことにより,引張強度が低くすること,また,電子線照射効果について見ると,引張強度あるいは弾性係数には照射の影響が小さいのに対して,アラミド繊維強化一方向強化材の繊維方向強度および繊維横方向強度は未照射材に比べて大きく低下することを明らかにした。さらに,繊維表面を走査型原子間力顕微鏡により詳細に検討することにより,アラミド繊維では,吸水と真空環境に放置することにより,ナノメータオーダの損傷が繊維表面で生じること,荷重負荷によるスプリッティングなどの表面損傷をナノメータオーダで捉えることが可能であることを示した。さらに,アルミナ繊維は,水環境中における荷重負荷により,繊維表面の凹凸がナノメータオーダで大きくなることを明らかにした。
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