近年開発が進められている先進工業材料を構造材として実用に供するには、強度、特に疲労強度の把握が不可欠である。本研究では最近の構造用材料、粉末冶金合金、金属基複合材料、セラミックス等を用い、一定及び変動荷重下での疲労き裂発生、進展についてその挙動と機構を検討した。先ずチタン合金では、変動荷重下のき裂開閉口挙動したがってき裂進展速度が材料組織に大きく依存することを明らかにした。また、同材料はじめ高張力鋼などの微小疲労き裂に対しては、高-低の荷重変動は、通常の長いき裂の挙動とは反対に、き裂進展の加速をもたらす可能性のあることを示した。SiC粒子ならびにSiCウィスカ強化金属基複合材料を用いた疲労き裂発生、微視き裂の進展挙動の観察からは、同一素材の強化材でもその形状及び製造法によりき裂発生機構および進展機構が大きく異なることはを明らかにした。即ち、粒子強化粉末鍛造材では粒子と母材の界面強度が比較的強くき裂発生は粒子近傍の母材のすべりにより発生するのに対してウィスカ強化鋳造材ではウィスカの抜落ち痕やウィスカ-母材界面の割れを起点として多数のき裂が発生した。なお、き裂進展における微視き裂の合体様相も材料により異なるが、粒子及びウィスカはともにき裂進展抵抗を増加させることを示した。次に走査型電子顕微鏡を用いて3%けい素鋼板における単一過大荷重下の疲労き裂進展挙動の観察を行い、き裂進展の遅延現像が微視き裂の屈曲、分岐と強く関係しているとを示すとともに、き裂先端近傍のひずみ分布が分岐、屈曲に伴ない複雑に変化することを明らかにし、非定常荷重下のき裂進展速度の評価には巨視的なき裂閉口現象の考慮のみでは不十分であることを示した。最後にセラミックス材料を用いた2段繰返し変動荷重試験では、金属系材料の長いき裂で観察される遅延現象は生じず、ブリッジングの破壊によるき裂進展の加速が観察されることを明らかにした。
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